カウンセリング事例②
【カミングアウトのハードル】
Bさんは、少々緊張した面持ちでカウンセリングにいらっしゃいました。
清潔感がある印象の30代後半の女性で、今の不安を素直にお話ししてくれました。
『自分の暗い部分を、隠さず話していいのか不安です。緊張しています。』
こう仰いました。
『そうカミングアウトできたことで、話す体制は整い始めていますよ』とお伝えすると、溜まっていたいたものがどっと溢れ出すように喋り始めました。
【手をつけられないほど混乱した悩み】
Bさんは、悩みを書き留めたメモを読み上げてくれました。
結婚をしてから、夫とBさんの立場が逆転した気がする。
面倒を見てやっている、というような精神的圧力を感じる。
夫が怖くて強く反論ができない。
モラハラの境界線が分からず、麻痺しているかもしれない。
不仲であるが性生活はある、夫との営みが苦痛。
子供が鬱陶しく感じる。
生理痛・排卵痛が辛くなってきている。
体がいつも冷えている。
自分の子供時代、親に愛されなかったと感じている。
自分の言葉で喋ることができず、ありきたりのことしか喋れない。
自分の気持ちを話している感覚が薄い。
言葉が上滑りしている。
何事も楽しめない。
夫にも子供にも優しくできない。
家族を愛したいのに愛せない。
自分の口から出てくる言葉は相手を傷つける言葉ばかり。
自分が優位に立つための言葉を常に考えている。
卑屈さを相手に気づかれないようにするために、取り繕う言葉を使ってしまう。
私はもっと感謝されるべきだ。
私はもっと有難がられるべきだ。
私はもっと労ってもらうべきだ。
そう思っているのに、周りからの感謝が足りない。
心に鎖をかけてしまっている・・・。
力なく言い、深くうなだれていました。
【愛されなかった子供時代】
Bさんのご両親との関係性を尋ねました。
『育ててくれた両親に感謝はしているが、それほど好きではないのです。
子供時代に愛されなかったからだと思います。』
Bさんは、また続けて話してくれました。
親のぬくもりを感じたかった。
悩んでいること、苦しいことを聞いて欲しかった。
受け入れて欲しかった。
抱きしめて欲しかった。
ここまで話し、Bさんの目から涙が溢れ、
『幸せになりたいんです』
と、真剣な目で私を見つめました。
彼女にとっての幸せは何かをお聞きしました。
Bさんは、
心から嬉しいと感じたい。
心からありがとうと思い、伝えたい。
屈託のない笑顔になりたい。
思い切り笑いたい。
自分の言葉で喋りたい。
変わりたい自分を想像できるようになったBさんは、胸の奥が熱くなるのを感じたと仰っていました。
【たった2週間で改善の効果】
心と体のバランスを取るための方法をお伝えしていきました。
・排卵痛・生理痛を和らげ、解消する方法(病院で検査済みで原因不明とのこと)
・体の冷えの改善方法
・Bさんがご両親を好きになれないことへの心理療法
まずは体の辛さに焦点をあて、Bさんの1週間のスケジュールや食生活を確認し、取り入れやすい項目から日常に落とし込んでいただきました。
わからないこと、不安がある時にはメールで相談に応じました。
約4ヶ月後には、排卵痛や生理痛が楽になり、寝込むこともなく、普段通りの生活が送れるようになっていきました。
ご両親に対しての心理療法は、1時間のカウンセリングにつき5回程度のメールでのサポートをワンセットにしました。
日常の小さな不安をそのままにせず、その都度、Bさんにとって最も腑に落ちる考え方をお伝えし、不安定さを手放していかれました。
心理療法のみの回数は5回で、メールサポートは約20回程度だったでしょうか。
Bさんは、あるがままのご両親を受け入れられるようになっていきました。
ご両親に、自分の気持ちを偽らず喋れるようになりました。
そして、ご両親の人間性の素晴らしさが理解できるようになっていきました。
ご自分の体の状態とご両親との関係が安定し、Bさんはご主人やお子さんに、自分の考えや気持ちを伝えらるようになりました。
自分を大切にする言動が自然になり、柔らかな表情になっていました。
【愛のある人間関係を築いていけるという確信】
穏やかさを取り戻したBさんは、幸せそうな笑顔を見せるようになり、家庭での変化を教えてくれました。
夫が家の手伝いを当たり前のようにしてくれるようになった。
Bさんの話を聴いてくれるようになった。
威圧的な言動をしなくなった。
Bさんの「ありがとう」という言葉に、感謝の気持ちが入るようになった。
子供が些細なことも相談してくれるようになった。
時には口喧嘩もするけれど、
「お母さん大好き。長生きしてね」
と言ってくれるようになった。
『自慢みたいで恥ずかしいですけれど』
と、歯にかんだ笑顔で教えてくれました。
「綾子さんが見守ってくれたから、変われました。
これからは、愛のある人間関係を築いていけそうです。」
Bさんはこう仰り、柔らかな空気だけを残し、お帰りになりました。
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エポソレ 川野綾子
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